植物成分由来の生体イメージリング剤の探索研究

 

 臨床医学、細胞工学、あるいは分子生物学の領域において、疾患の特定部位や細胞特定部位の可視化のために、様々な蛍光剤が、用いられています。現在用いられている蛍光剤はその大半は合成由来のものであり,骨格の多様性が乏しいのが現状です。蛍光剤は、DNAヘのインターカレート剤や、タンパク、RNAなどの末端に予め導入標識化し、作用機構の解明のために分子プローブとして用いられています。研究室では,薬用植物を材料として、含有される新規天然蛍光低分子を見出し、構造確定後、生細胞へ導入実験を行うことにより、植物成分由来の新しい構造を持つ蛍光剤の探索研究をおこなっています。熱帯産薬用植物Qussia amara より見出された新規蛍光成分 アマラステリンA(1)は,非常に優れた蛍光特性を持ち,毒性を示さず,生細胞内での長期間の染色持続性を持ちます。この化合物の多様な誘導体を作成し,生体センサーへと応用を行っています。さらに研究室内に蓄積された1000種を超える植物より,新たな天然由来の蛍光基材の探索を継続しています。

中国横断山脈産サルビア属植物に含有されるジテルペン成分の骨格転位に関する研究

 中国横断山脈地域は地形が複雑で高い山と深い谷や河により,地域が隔てられており,植物の進化と分化を見ることが出来る格好の場所であるといわれています。私達の研究室はいくつかの大学とともに,中国の研究グループと連携を図りながら,この地域の植物の形態,DNA,植物成分の研究を行っています。植物成分はテルペノイド成分に焦点を絞り研究を行っています。私達のグループはサルビア属植物のジテルペン成分について詳細な検討をおこなっています。

 サルビアは高度2000-4000mに生育する薬草であり,大きな青い花を持つ美しい植物です。根は赤い色をしており,紅い色の成分が心臓の医薬(丹参)として用いられています。サルビアの成分は多様で複雑な構造を持つものが多いことが知られており,ジテルペン成分の骨格転位と進化についての研究を行っています。

 

 

 

 

熱帯産薬用植物由来の新規成分の探索

 私達の研究室では長年に渡り,ブラジル産の様々な薬用植物の成分研究を行ってきました。デイゴであるErythrina velutina由来の催眠導入薬ハイパフォリンや抗腫瘍性のエリスリナアルカロイド成分などの新規成分を単離し,構造と活性についての研究を報告してきました。

一方,マメ科のBowdichia virgilioides(現地名 スクピラ)の成分についても研究を行っています。これらの植物成分は,数多くの新規フラノカッサンタイプのジテルペン成分を含んでおり,LPS誘導型のNO産生抑制や,抗マラリア作用など色々な活性を併せ持っていることが分かりました。

ブラジルの研究者との共同研究により,様々な植物成分の研究を行っています。

 

架橋構造を持つ複雑なアルカロイドの成分研究

アルカロイドの中でも架橋構造を持つ複雑な化合物の分離と構造、生物活性について研究を行っています。これらの化合物は構造解析の難易度が高くかつ強い活性を併せ持ち、チャレンジングなテーマとなっています。

現在は、ヒトツバハギ,ヒガンバナ科植物,ユズリハ,イヌガヤなどの多環で架橋構造を有する複雑な小分子のアルカロイドについて構造と活性の研究を行っています。

特にヒトツバハギより本研究室において単離構造解析されたsecu'amamine類は多くの有機合成化学者の合成ターゲットとして活発に研究が行われています

 

菌類由来の生物活性物質の探索研究

本学薬学部との共同研究において,種々の新規な菌由来の代謝産物の構造と活性の研究を行っています。

 

身近な食物や健康食品に含まれる有効成分の網羅的研究

私達の研究室では,身近な野菜や健康食品に含有される研究を行っています。

 

民間伝承の医薬であるプロポリスや,月桃,ショウガ科植物などを取り上げています。

まだまだ未知の有用な成分が含有されていると考えられ,予防医学の観点から網羅的な成分精査を行っています

日本薬学会年会講演ハイライト

2008年 植物アミノ酸でぐっすり?!

2010年 弘法大師の妙薬に学ぶ~薬剤耐性がんへのアプローチ~

お問い合わせ

特任教授 大崎愛弓

Prof.  Ayumi Ohsaki, Ph.D.

 

 日本大学

文理学部化学科

 

天然物化学研究室

本館 0604

Tel:03-5317-9402

e-mail:

ohsaki.ayumi@nihon-u.ac.jp